うーん、と私は首を傾げて思案顔する。


この際、修学旅行というイベントを利用してぐんと距離を縮めるのはグットアイディアだろう。


しかし、この奥手な佐藤くんが積極的にひまりちゃんに甘い言葉を掛けたり、どきどきさせたりすることを想像してみる……アッ、無理だわ。真っ赤な顔をして逃亡しようと顔を覆い隠して全力疾走する佐藤くんしか思い浮かばないわ。

「あー……あ!」

「なんか思い浮んだのかよ?」

ぽん、と私は広げた手のひらに握りしめた片方の手の腹で叩く。

「せっかくなんで、佐藤くんに選んでもらうってのもアリっすね」

「どういうこと?」

「まあまあ私にお任せくださいよ」


至極心配そうに顔をゆがめる佐藤くんのことなどほおっておいて、私はテーブルの傍らに置いてあった紙ナプキンに、カバンの中から取り出したペンで適当に縦線を引き、その線の下につらつらと文字を並べていく。


全て線の下に文字を書き終えて顔を上げるころには、佐藤くんの顔が顔面蒼白していた。佐藤くんもどうやら、私が何を考えているのか理解したらしい。

「さあ、佐藤くん選んでください!」

「……えと、このあみだくじは……」

「あみだくじですが」

「……これを選んで、どうするの」

「言わなくてもわかってるく・せ・に」


ひらり、と紙ナプキンを佐藤くんの前にひらつかせて、にっこりと微笑んだ。




「───まさか、自分で選んだものに、文句とか言いませんよね?」