佐藤くんは甘くない



「……」


ぼうっと、空を見上げる。

あれほど輝かしく打ちあがっていた花火は、もうどこを見上げても嘘だったんじゃないかと思ってしまうほど、跡形もない。


花火が終わったからなのか、あとはもう帰るだけだから、外の喧騒もだんだん静かになっていく。


「あーあ」


私のかすれた声が、保健室に寂しく響き渡る。

さっきまで隣にいたはずの佐藤くんを思い出すように、座っていた場所に触れてみる。まだほんのり温かくて、確かに佐藤くんはここにいたんだと、改めて実感する。


「……結局、最後まで……言えずじまいかぁ……」


そういって、まだ温かさの残る部分をぎゅっと手のひらで握りしめた時。



「……あ、れ」


どうしてだろう。

さっきまでなかったはずなのに、シーツに黒いしみのようなものができていた。それは、ぽたぽたと音を立てながら、シーツに染みを増やしていく。どんどん、止める暇もないくらいに。

私は、ゆっくり自分の頬に触れる。


……ああ、そっか。

私、泣いてるのか。