佐藤くんは甘くない



……違う、違うでしょ。

この言葉は、私に向けられた言葉じゃない。


佐藤くんは、ただ勘違いをしているだけ。


私が、佐藤くんのことをほかの人よりも少しだけ多く知っているから、だから、勘違いしているだけ。


弱さを見せられるのは、私だけだと思っているだけなんだ。

でも、いつか佐藤くんの隣に立つのが私じゃないってわかる日が来る。遅かれ早かれ、その日はやってくるのだ。

強く、手を握りしめた。行き場のない私の手のひらは、佐藤くんの体温に触れることなく、名残惜しく、無意識のうちに引いていく。

そう。

いつかやってくる。佐藤くんの大切な人が私じゃなくなる日が。

だから、その日が───







「佐藤くん、私は、ずっと一緒にはいられないです」






今日であっても、変わらない。



佐藤くんは、私の返事がなんとなく想像できていたのかもしれない。

うっすら涙の膜が張った瞳を、大きく見開いてそれから、苦笑しながら前髪をくしゃっと握りしめる。


「…………そう、だね。うん……ごめん。なんか、弱気になってるみたい。変なことばっか口走ってる。今日ずっと緊張しっぱなしだったから……はは、ごめん。聞かなかったことにして」

「佐藤くん」


ちょん、と佐藤くんの肩をつつく。

佐藤くんは、ぴくりと肩をびくつかせて、恐る恐るとでも言ったように私のほうを向いてくれた。