佐藤くんは甘くない



グラウンドのほうから、楽しそうに花火のカウントダウンをし始める声が聞こえる。


「……結城」


切羽詰まった声が、聞こえる。

私は窓に向けていた視線をゆっくり佐藤くんの背中に移した。



「この花火が終わったら……朝比奈さんに、告白する」




───ヒュー……ドン!!


佐藤くんの言葉のタイミングを見計らったように、青と緑と赤の大きな花火が真っ黒な空を一瞬、まばゆいほど明るく照らす。


いっそ、花火の音でかき消されてしまえばよかったのに、その言葉はちゃんと私の耳に届いていた。


開きかけた口が、勝手に閉じる。ドン、また大きな音を立てて、きらきら星が降ったように、花火が舞い上がる。


「朝比奈さんに、告白、するから」


佐藤くんがもう一度言う。


……知ってる、分かってる。

佐藤くんが今日告白する。佐藤くんにそう告げられたあの日から、私の頭の中でずっと忘れたくて忘れられなかった言葉。