佐藤くんは甘くない



───ガツン!

「いった……っ」


あまりに後ろに下がりすぎて、後ろの壁に頭を打ち付けてしまった。寝起きの一発で、覚醒しかかっていた意識が戻る。

私は痛みに頭を押えながら、前を向く。


その声の主は、どうやら私のおでこに手を当てて熱を測っていたらしい。私のほうにてのひらを向けたまま、私の動揺っぷりに唖然としていた。


「……だ、だいじょうぶ?」


「……っ、だ、だいじょうぶッス」


「何をそんなに驚いてんの。別に寝起きドッキリ仕掛けに来たわけじゃないのに」


「あはは……、さ、佐藤くんはどうしたんですか?」


声の主───佐藤くんは、苦笑いする私を疑わしげに眺めた後、小さくため息をついて、ベッドに腰掛ける。


必然的に、佐藤くんの背中が私のほうを向く。

正直、あまり佐藤くんの顔を見ていつも通り話せるほど、余裕がなかったからありがたかった。


「……朝比奈さんがさ、」


佐藤くんがぼうっと、惚けたような口調でつぶやく。それはどちらかといえば私に語るというよりも、自分自身の出来事を思い出すようにしゃべり始める。


「結城のこと探してたんだけど、結城は仕事があるから暇がないって話になって……それで、いろいろ模擬店、回った」

「……そ、うッスか」


よかったですね。

そういいたいのに、私の口は動いてはくれなかった。