「ハル」
「……ん?」
恭ちゃんの呼びかけに、いつの間にか伏せていた顔を上げる。
そこには、いつになく、複雑な表情を浮かべた恭ちゃんが、何かを言いかけて口を開く。ちいさく漏らした声は、続くことなく宙に溶けていった。
そして、口元に小さく笑みを浮かべて私の頭を優しくなでる。
「もし、何かあったら……俺を頼れよ。俺はいつだって、お前の味方だってこと忘れるな」
「……ありがとう」
恭ちゃんが、幼馴染で居てくれてよかった。
じゃなかったら、今頃どうなっていたか考えるだけでも怖くなる。恭ちゃんはいつだって突っ走ってしまう私の手を引き留めて、後ろを振り返って考えるように諭してくれた。
……ああ、やっぱり何度ありがとうを繰り返しても、この恩は返しきれないんだろうな。
「恭ちゃんが幼馴染で、よかった」
「知ってる」
「……恭ちゃんは何でもお見通しだね」
「ばか、俺がいったい何年お前の幼馴染やってると思ってんだよ。ほかの奴が幼馴染だったらとっくにお前の幼馴染なんて投げ捨ててるね」
「……確かに」
私が小さく笑うと、恭ちゃんも同じように笑う。
ふと、視線を逸らして窓の外を眺める。さっきまであんなにさんさんと照りつけていたはずの太陽は、気づけば沈みかけて青空を朱色で塗り替えはじめていた。
……もう、終わりがやってくる。
いつの間にかはじまっていた、私の恋の、終わりが。



