佐藤くんは甘くない



それから、どれくらいの時間が立ったろう。

短かったのか、長かったのか、それすらもわからなくなるくらいの時間の後、私はずっと伏せ続けていた顔をようやく上げた。


目の前にいる、恭ちゃんの瞳にひっどい面の自分が映る。


これから、まだ閉会式だって残ってるのに、こんな顔じゃあ顔向けできそうにない。


「恭ちゃん」

「ん?」


まだ目頭に残っていた涙を恭ちゃんが、そっとぬぐってくれる。

恭ちゃんには、助けられてばかりだ。いつかこの恩が返せる日が、来るだろうか。こんなにも私を支えてくれて、守ってくれる恭ちゃんへたくさんのありがとうを、返すことができるだろうか。


「……ありがとう、もう大丈夫」

「そっか」


私が力なく恭ちゃんの胸を押し返すと、恭ちゃんのまわっていた腕の力がふっと抜ける。心からぽっかりその温かさが抜け落ちて、少しだけ寂しい。不安だった気持ちが戻ってくる。

でも、私は私の足で立って、最後は私が自分で自分の痛みを受け入れなきゃいけない。


……これから、もっと苦しくなると思う。想像もつかない苦しみが、ずっと私にまとわりついて離れないだろう。


でも、私は決めたんだ。


だから、もう後戻りはできない。