佐藤くんは甘くない




「今日、というか最近かな……俺たちのごたごたが終わったあたりから、お前、なんだかずっと我慢してる。すごく、苦しそうな顔して、笑ってる」


「……」



全部、正解。

何もかも、恭ちゃんは私の心をでも覗き込んでいるみたいに、何でもわかってしまう。


でも、口には出せない。

出せるわけが、ない。恭ちゃんは、私にとって大切な人で、傷つけたくなくて。……私が今苦しい理由を話して、それでなんになるっていうんだ。また、恭ちゃんを傷つけるだけなのに。

顔を伏せたら、涙がこぼれてしまいそうで、嫌だった。

……でも、恭ちゃんに顔を見られるのが、もっと嫌だ。


唇を噛みしめて、ぐっと気持ちを抑え込む。


視界の隅で、恭ちゃんが私をちらりと横目で見て、すぐに前を向くと、小さく息を吸い込んで上を向く。


「ハルは、勘違いしてるみたいだからさ、一応言っておくけどさ」

「……」

「俺は、俺の意思でお前を守りたいって、思ってるよ。……前の俺は、お前を守ることに精いっぱいで、お前を守ることで、自分も罪悪感から守ろうとしてた。

 けどさ、お前の本当の気持ちを知って、俺のことを憎んでないんだってわかって……それでも、やっぱりお前のことを好きだって気持ちは、なぁんにも変わんねえんだよ。たぶん、根底では今も昔も同じ。

 確かに罪悪感で、お前を守ろうとしてたけど、でもそこにはお前が好きだから守りたいって気持ちだってあった。


 ……だからさ、もう、いいんだよ」


「……」


「お前はお前の気持ちを隠さなくなって、いいんだよ」