佐藤くんは甘くない



「それも、あるけど……」


一番は、あの時、声を掛けてくれたこと。

もし、あの時恭ちゃんが声を掛けてくれなかったら私は、きっと……ううん、絶対に、言っちゃいけないことを、口にしていた。


恭ちゃんも、それがわかっていて、助けてくれたはずだから。


……でも、この様子だと、そのことはいやでも口に出すな、と言われているような気がして私は口をつぐんだ。


しばらくの沈黙。

たまにやってくる風だけが、私たちの間で聞こえる。


「……ハルさ」


沈黙を破ったのは、恭ちゃんのほうだった。

頭に乗せられていた手がすうっと退かれて、私は恭ちゃんのほうに顔を向ける。恭ちゃんはものすごく言葉を選ぶように、難しい顔をして、続けた。


「ハル、何か、困ったことがあったんだろ」

「……」


否定が、できなかった。

すぐに否定すべきだった。それがいけなかった。


だって恭ちゃんは私の幼馴染を何年もやってきたんだ。私が言えない言葉すら、簡単に見つけてしまう。