舞台が終わった後、私たちは着替えと片付けのため、二班に分かれて行動することになった。


着替える必要のない私は、せっせと舞台のために使った小道具を片付けるため、クラスメイトと体育館の舞台係の人に指示を飛ばして、ようやく一通り片付いて、一息つく。


最後の小道具に使った、指輪の入った木箱を手に持って、舞台裏のドアを開けて外に出ると、次の組の舞台道具搬入の指示を飛ばす、恭ちゃんの姿が見えた。


恭ちゃんは、すぐに私の姿に気づいた。

隣に立っていた子に何か話して両手を合わせて軽く頭を下げると、私のほうに駆け寄ってくる。


「お疲れさん」

「恭ちゃんもお疲れ様。まだ実行委員の仕事あるの?」

「あー、うん。悪いな、クラスのこと任せて」

「いいよ、私午後からは暇だし」


恭ちゃんが私の周りをきょろきょろ見渡して、誰もいないことを確認すると、ポケットを探って何かを取り出す。

「これ、教室の鍵。文化祭で一般の人も入ってるから、盗難にあわないように施錠しておけって先生が」

「了解ー!預かっとく」


手渡された鍵をポケットの中に入れて、その場から立ち去ろうと、足を進めた時だった。


「───ハル」

「……ん?」


首だけ振り返ると、恭ちゃんが真剣な顔つきで、こちらを見ている。



「佐藤と、何があったか知らないけど───逃げるなよ」