慌てて、マイクのほうに向きを直していた、その時だった。





───佐藤くんと、視線があった。


佐藤くんは一瞬、私のほうを見て何か言いたげに口を開いて、でも、白雪姫役の仙田さんが呼びかけて、そのまま舞台から下がっていってしまった。


『以上、2年3組による、腹黒姫と七人の小人でした』



私のナレーションが言い終わると、再び拍手が舞い戻る。


さっき占めていた、達成感と充実感はどこか遠くに置いてきてしまったようだった。



頭に残ったのは、さっき見せた佐藤くんの何か言いたげな表情と。

私が勝手な意地を張って、勝手に傷ついて佐藤くんを怒らせてしまった、あの時の表情。


無意識のうちに力の入ってしまった手のひらの力を抜くように、そっと重ね合わせる。



……佐藤くんに、謝らなきゃ。