佐藤くんは甘くない




『それなら、歯を突き立てられる前に、すべて抜いてしまわないと』



『……え、』



白雪姫の声が、小さく漏れる。

その瞬間だった。


自分のすぐ近くにいた近衛隊の一人に、いとも簡単に、彼女の体を動けないよう両腕をくるりと後ろにひねり、そのまま地面に膝をつかされる。

あまりにも突然に起きた出来事に、身動きのできなかった。


そして、白雪姫の目の前で、最悪の事態は起こっていた。



『……あ、っぐ……っ』



絞り出すような、声。

複数人の近衛隊の人間が、剣士を取り押さえるかのように、彼の上にのしかかっていた。


『なに、を』

白雪姫の声は震えていた。わかっていたのだ。この先起こることは容易に想像できた。体をよじらせ、自分を拘束し続ける男から逃れようと必死にもがく。

その間にも、剣士の危険は着々と迫っていた。


先ほどまで自分のすぐ近くにいたはずの王子は、一歩、一歩と確実に剣士のもとへ足を進めていた。鞘から剣を抜く音が、剣士のうめき声とともに森に響きわたる。