その言葉を聞いた瞬間、目を見開いた王子の力が緩む。
拮抗していたはずの剣は、だんだんと王子が押されていく。そして、その隙を見計らったように強く剣を押し込んだ剣士は、そのまま横なぎに振るう。
数メートル先に飛ばされた王子を見向きもせず、白雪姫を振り返ると、弱弱しい彼女の手を握りしめ、走り始める。
一瞬、後ろを振り返りそうになる白雪姫に、
『振り向くな!走れ!』
大きく声を張り上げる。はっと我に返ると、白雪姫は剣士の背中だけを見つめ、走り続ける。自分の目の前を走る彼だけが、唯一自分の味方であることを噛みしめながら。
体育館中が緊張感に包まれたまま、舞台が暗転していく。
ざ、ざ、っざっと二人の走る音と、それを追いかける複数人の足音が響き渡る。ゆっくりと照明がつく。舞台のわきから手を繋いだまま、白雪姫と剣士が飛び出してくる。
しかし、剣士の足元はだんだんとふらつきはじめていた。息遣いも乱れ始める。それは、走っただけでなるようなものではない。
『───て、待って!』
それまで走り続けていた剣士の手を引き留めるように、白雪姫は強くつないだ手を握りしめる。
立ち止まった剣士は、苦しそうに顔を歪めながら、自分の胸元を掴み再び走り始めようと、もたつく足を前に出す。



