怒りを抑えきれない白雪姫を横目に、王子は残念そうに肩を落としてあーあ、といたずらの失敗した子供のように近くにあった石を蹴り上げ、言って見せる。
『本当に、僕の失態だね。
───君にばれてしまうくらいなら、いっそ、もっと早くにあの人を殺しておけばよかった』
『きっ、さま……っ』
すべてを吐き出すかのように、そう叫んだ白雪姫は、剣士の腕を振りはらい一直線に王子のもとへ走っていく。
丸腰の自分が、勝てるなんて思ってもいなかったに違いない。
まして、何か武器を持っていたとしても、剣士の振り上げた一振りに瞬時に反応できる王子に対抗できるわけもない。それでも、彼女は赦せなかったからこそ、自らの命を犠牲にしてでも飛びかかった。
手を伸ばし、あと数センチ先で届こうとしていた、その手は───
『───黙れ』
ぴたり、と止まる。
目の前で起こっている事態が、把握できないのか、白雪姫は大きく目を見開いたまま数歩後ろに下がった。
『なんの、つもりだギル』
『……』
『僕への恩を忘れるつもりかい?僕は君の主だぞ』
そこには、剣士の剣と王子の剣が拮抗したまま、どちらも譲らず、ぎりぎりと鉄の擦れる音が森に響き渡らせながら、対峙している姿があった。
王子を強く睨み付け、揺るがない芯の強い声で言った。
『俺の従うべき主は、今のあなたではない。
俺が従うのは、〝俺を救ってくださった〟王子と───白雪だけだ』



