佐藤くんは甘くない



そして、そのまま王子は小さく嗤う。

剣士を見上げ、白雪姫に視線を写し、もう一度嗤った。


その狂気じみた笑いに、剣士は白雪姫を抱いた腕により一層力がこもる。白雪姫は、剣士のその腕にしがみつくように身を寄せる。


振り払った剣をもう一度前に構えなおして、剣士は静かに王子を見つめた。


王子はその顔に笑みを張り付けたまま、立ち上がり、剣も構えずにくすくす笑いながら首を傾ける。


『これは、どういうことかな───ギル』


ぴくりと、剣を持った手に力が入る。ギル、それが剣士の名前だった。


『君は、僕を裏切るのかい?』

『……』

『君のしていることが、どれほど罪深いことだと分かったうえで、それでも君の主である僕に剣を向けるつもりなのかな?』

『……』

『ああ、違うかな。こういったほうがいいのかな。
 
 君が今こうして生きていられるのは、誰のおかげか、わかっているかい?』


剣士の息をのむ声が、聞こえた。

唇を噛みしめながら、剣を持っていた手がだんだんと下がっていく。見上げる白雪姫の視線に苦しそうに顔を歪め、ついには剣を持つ手は力なく、動かなくなってしまった。