一瞬、固まりかけた白雪姫の額にはうっすら汗がにじんでいた。
森の静けさが、先ほどまでのゆったりと流れる優しいものから一転して、不気味なほど突き刺さる冷たさへと変貌していた。
恐る恐る顔をあげて、
『ひっ……』
持ち上げたバスケットが反動で、地面に落ち中身がぶちまけられる音とともに、白雪姫の小さな悲鳴が漏れる。
黒いマントの下。
白雪姫の瞳は、しっかりと捕えていた。
自分の父親を殺した、敵の残虐的な笑みを。
震えたまま動かない白雪姫をよそに彼───王子は、悠然と語りかける。
『探しましたよ、〝腹黒姫〟』
『な、んで』
『なんで、とはまた奇妙な問いをされますね』
くすくすと、恐怖におののく白雪姫をあざ笑うように目を細め、静かに笑う。そして、そっと腕が上がっていき、白雪姫の白く透き通るような頬を軽くなでるように、指で触れる。
『そのようなこと、決まっているではありませんか』
それまで優しくなでていた指がぴたりと、止まる。その瞬間、白雪姫の頭を持つようにしてぐっと自分のほうに引き寄せ、
『───あなたが、欲しいからですよ』
まるで、悪魔が囁くように、言う。



