『……俺は、』
やがて、剣士が重々しく口を開く。その声音は、迷子になった子供のように弱弱しいものだった。
『俺は、王子がいなければ、きっとここにはいない。
王子が、俺を助けてくださったから、俺は……ここにいる。王子は、俺の命の恩人なんだ』
『……どういう、意味?』
『俺は、国王の妾の子だった。その存在が世間に露見してしまえば、王族の品位も落ちてしまうだろう。王位争いだって起こるかもしれない。それを王族の人々は恐れていたんだ。
俺は、いらない子だった。だから俺が妾の子だということが知られてしまったとき、殺されるはずだった。薄暗い牢獄で、剣を突き立てられるその瞬間、』
剣士はぎゅうっと、自分の胸元を握りしめながら、唇を噛みしめる。
『彼をどうか助けてやってくれないかと俺を、かばってくれた……。それに俺を近くに置いてくださったんだ。……王子は、優しい方で、思いやりのある方で、だからっ、だから……王子が、人を殺すなんて、』
そこまで言いかけて、そこから先は続かなかった。
視線を外すことなく、剣士を見続けるその瞳を再び見つめることは、なかった。震える手を握りしめて、こみ上げてくる気持ちをすべて呑み込むように、彼は言う。
『俺は……王子の命令なら……。
───あなたを殺すことも、いとわない』



