『それは……、』
剣士は、その視線から逃れるように俯く。
くすりと笑った後、彼女は静かに口を開いた。
『お父様の事故死も、お母様が床に伏されたのも、私の周りの人間が次々に亡くなっていくのも───私のせいなんじゃないかって、実しやかにささやかれていたから。腹の底では何を考えているのかわからないって、ね。
その噂は瞬く間に広がって、国中の人々が私のことをいつしか遠ざけるようになっていった。国の中はめちゃくちゃだった。……そんな時に、王子と私の婚姻の話が持ち上がったのよ』
『……』
『そう、これが王子の思惑だった。
私の信用を壊して、一人にすることで、私という権力を手に入れようとしていた。今思えば、結婚を進めようとしてきた大臣もいたのだから、王子の手の内のものが侵入してきていたのは、明白ね。
王子は私なんかよりずっと、頭のまわる人だった。
だから、私が知らない間に私は檻の中だった、って事。だから、私は。
私は───あの城を、抜け出したのよ』



