一斉にして、声を潜めていた虫や鳥が騒ぎ立てる。
呆気にとられ、言葉を失う剣士の腕を振り払い、彼女は一人暗闇の中へ溶けて行ってしまった。
暗転とともに、今度は向こうの舞台袖から必死に走ってくる足音が聞こえる。肩を上下に揺らしながら、腹黒姫は真っ暗な森を駆け抜ける。
そして、息が持たなくなったのか舞台の中央で、足を止めしゃがみこんだ。
『おとう、さ……っ、おとうさま……っ』
両手で顔を抑えて、彼女は泣きじゃくる。
そこには、今まで気丈に振る舞い、誰からの指図も受けず、頑として自分を曲げなかった気の強い彼女はどこにもいなかった。
ただ、自分の肉親を殺され、一人どうしようも立ち尽くす、年相応の女の子だけ。
静まり返ったその暗闇の中、唯一聞こえていた彼女の鳴き声に、かすかに違う音が混ざる。
───ザッ、ザッ。
人の歩く音。
しかも一人ではない。複数人で、このあたりを歩き回っている。こんな時間に、村の人が出歩くわけがない。
『どう、しよう』
そう漏らした声は、あまりにも弱弱しい。
あたりを見渡して、隠れそうなところを探す間にも足音はだんだんと大きく、確実にこちらへ向かってきていた。



