目の前で、強く唇を噛みしめた彼女は、悲痛に顔を歪める。それは、ずっと彼女が城に帰らない理由と、何か関係があることは明白だった。
『先に行くわ。一人にして』
『姫様、おまちくださ、』
剣士から逃げるように、早口でまくしたてながら踵を返す彼女の手を、慌てて掴み取る。彼女のか細い腕は、その静止にぴくりと震えた。
フードをかぶり、明かりといえばぼんやりと浮かぶ淡い月の光だけ。そんな状況で、腹黒姫の表情は読み取れない。
『……は、……』
彼女が、ぽつりと呟く。
聞き返す暇すら、与えなかった。振り返った拍子に、彼女のかぶっていたフードがはらりと取り払われる。月夜ですら輝く金色の髪が広がり、観客中がその美しさのあまり、目を奪われる。
けれど、彼女の美しさを際立たせていたのはそれだけでは、なかった。
透き通った肌に、それはほろほろと滑り落ちて、地面に落ちていく。いくつも、いくつも涙が零れ落ちていく。
そして彼女は、静寂を切り払うような声で、叫んだ。
『っっ、私は、父を殺した人間と添い遂げる気はないわっ!!』



