走り去る二人の影を、スポットライトが追いかけながら、暗転していく。
袖に待機していた裏方たちが一斉に動き始める。
袖の近くに立っていた瀬尾が私を振り返ると、OKサインを向ける。小さくうなづいて、私は小さく息を吸いなおし、マイクに顔を近づける。
『───こうして、二人の不思議な関係が始まりました。数日が経つと、隣国の騎士団が勢力を挙げて腹黒姫を探し始め、より一層彼女は身をひそめながら暮らしていました』
私のナレーションが終わると、ゆっくりと淡い光が舞台を照らし始めた。後ろのスクリーンにきらきらと宝石をちりばめたような星と、ひっそりと声を潜めるように弱弱しい月が映し出される。
とん、とん、ときびきびした足取りで、顔を覆い隠すようにしてかぶせられた布を翻しながら、腹黒姫が歩く。虫たちの奏でる音と、腹黒姫以外の足音が、一歩遅れて聞こえてくる。
彼女は大きくため息をついた後、立ち止まり後ろを振り返る。
『……ここまでついてくる必要あるのかしら』
彼女の視線の先には、
『一応俺は、姫様を守ることが仕事ですから』
闇夜に溶け込むような黒い髪をなびかせながら、控えめに剣士がほほ笑む。そんな剣士の表情に心底うんくさそうな冷たい視線で応戦する腹黒姫は、
『正直に言えばいいのに。私に逃げられたくないのだと。……あいにく、私は逃げも隠れもしないわよ。あなたが城に戻れ、なんて言わなければの話だけれど』
釘をさすように、それだけ告げるとまた歩き始める。



