『───貴様、何者だ』
鋭い尖った声とともに、背後からすっと一筋の剣が彼女の首筋に這う。観客席から待っていましたと言わんばかりに、小さな黄色い声が漏れだす。
彼女はぴくりと肩を震わせながら、それでも気丈に返した。
『……ただの放浪人です。森を抜けようと歩いている途中、迷いここで助けを待っていたしたいですので』
『……森を抜けても、あるのは小人の家だけだと聞く。一つ聞いてもいいか?』
『なんでしょう』
『華やかなドレスを身にまとった婦人を探している。お前は見たことがあるか?』
『……いえ、存じ上げません』
体育館中に緊張感が走る。
誰もが二人のやりとりに息を飲んだ。剣士は、しばらくマント越しから彼女を見抜くようにじっと見つめた後、小さくため息をついて首筋にあてた剣をそっと離すと、それを鞘に納めた。
そして、彼女の前に立つと、
『俺もちょうど、森を出るところだった。……ついてくるか?』
先ほどよりも柔らかな口調でそう聞いてくる。腹黒姫は小さく頷く。



