佐藤くんは甘くない



舞台が暗くなる。

舞台上に上がった裏方も出演者も小道具やら大道具を一斉に、はきだす。私はこの時間のつなぎだ。


『それから、時は数日経ちました。

 城を脱走し、小人たちとテーマパーク建設に精を出す腹黒姫をよそに、王子が送った剣士は着々と腹黒姫に近付いておりました。

 果たして、腹黒姫が城を脱走したわけは?
 そして、腹黒姫は王子と結婚するのでしょうか……!?』


ちらりと横を窺う。

最後の机が搬送し終わったのか、すぐ近く袖に立っていた瀬尾が私に向かって手を振る。私は小さく頷きかえして、次のセリフへ。


『腹黒姫は、自分に追手がかかるだろうと予想し、外へ出るときは必ず顔の隠れるマントをかぶり、小人たちと行動を共にしていました。ですが、土地の下見の途中、小人たちと逸れてしまいました』

その声とともに、照明がつく。

深い森の中、マントを深くかぶった腹黒姫がきょろきょろとあたりを見回していた。


『……困ったわね。随分深いところまで来てしまったみたい。むやみに歩くとますます迷子になってしまいそうね』


彼女はそういうと、すぐ近くの木の幹に腰を下ろす。うとうとし始めたその時だった。