『───一方、そのころ。
お姫様が住んでいた城では、お姫様が抜けだしたことに気付き大慌てで探しておりました。なぜなら、彼女の婚約者が隣国から一目彼女を見ようと、やってきていたからです』
私のナレーションとともに、舞台に再び灯がともる。
『姫様が抜けだしたというのは、本当ですか?』
尊大な口調で、きらびやかな白い衣装に身を包んだ王子が、眉を下げる。
敬意を表すように跪いた、長いあごひげを蓄えた70にはなりそうな老人の大臣が、
『申し訳ありませんっ、今朝までは姿を見かけたというメイドがいたのですが……我が王国の威信にかけて必ず、探し当てますので、どうぞ王子の広い度量を持ってお待ちください』
切迫した声でそう声を荒らげる。
───そして、その時だった。
わあ、と女子たちからの歓声が上がる。体育館のスポットライトが一斉に彼の方を向く。
黒く、凛とした軍服を纏って、腰に剣を携えた剣士───佐藤くんの登場だ。数百の視線を浴びてもなお、佐藤くんは涼しげな表情を崩すことなく、起伏の少ない声で言った。
『王子がいらっしゃることを知っていながら、このような失態を犯す時点で、弁解の余地などないこと、お前分かっているのか』
キン、と音を立てて剣士は、懐の剣を抜き、首を垂れる大臣の首へあてがう。



