佐藤くんは甘くない



***


「じゃあ、次のクラス、スタンバイお願いしまーす」


体育館、舞台上。

幕が下りた状態で、実行委員の係が小さな声で指示を飛ばす。


その声と同時に、舞台裏で準備をしていたクラスメイト達が一斉にセットを始める。

私は舞台裏のすぐ、袖幕の近くにナレーション用のマイクが設置された机の前に座って、ひたすらに台本を読み返していた。

幕の向こう側からざわつく声が聞こえる。うん、客入りは上々みたいだ。


「いけそうか?」


ふいにそう声を掛けられて、後ろを振り返ると恭ちゃんが立っていた。


「なる様になれ、って感じかな」

「適当にアドリブ入れてツッコんでもいいってさ」

「……ナレーションがツッコむ劇ってなんなの」

「それくらいツッコみどころ満載の劇なんだろうが。ボケを拾いきれるのお前くらいしかいねえもん」

「そりゃどーも」


褒められいるのか、貶されているのかよく分からない。たぶん両方だ。

舞台上に準備しに行った人たちが、戻ってきた。セットし終わったらしい。