佐藤くんは甘くない



くらり、と体のバランスが崩れる。


恭ちゃんは私の体を支えて、心配そうに顔を覗き込んで、大丈夫?と聞いてくる。私は笑って大丈夫だから、と恭ちゃんの胸を押し返した。


……今は、感傷になんて浸っている場合じゃない。

この状況を見て、きっとみんなは佐藤くんが悪いんだってきっと決めつけてしまう。



原因を作ったのは私。

勝手に期待した私が悪い。

私がもっと、強かったら、あんなことでいちいち怒ったりなんてしなかった。



小さく深呼吸を繰り返す。

私は、にんまりと笑顔を作って、明るい声で言った。


「いやーごめんごめん!佐藤くんに軍服が可愛い可愛いって連呼してたら、佐藤くんが怒っちゃってー。大したことじゃないから大丈夫ッス」


私の言葉に、集まってきたクラスメイトの肩がほっと、撫で下ろされるのを確認して、


「んで、悪いんだけど私ナレーションの練習あんまりしてないから、読み合わせしたくって。……誰か代わりに佐藤くんの髪、コテでセットしてほしいんだけど、頼める人ー」


手を上げて左右に振ると、近くにいた女子が顔を見合わせて、二人手を上げてくれた。じゃあ、よろしくねーと私はその二人の肩を叩いて、すぐにカーテンの仕切りの向こう側へ。



一瞬、こっちを見た佐藤くんが、何か言いたそうに見ていたことを、気付かないふりをして。