佐藤くんの近くに、たぶん一番近くにいた女の子は、私だ。
だからこそ、佐藤くんは私に言われたくなかったんだ。
私が佐藤くんに冗談でも、期待させるような言葉を掛けてほしくなかったように。
佐藤くんの瞳に自分が映る。そこには、情けなく眉を下げて唇を噛みしめる私が映っていた。
馬鹿だなぁ、私。なんで上手く偽れないんだよ。なんで、笑って流せなかったんだよ。今までそうやって、恭ちゃんとやってきたのに。
言葉には、出さないから。
絶対、出さないから。だから、許して。
居もしない誰かに謝る。ただ、ひたすらに。
私は口元を塞がれた手を掴んで、引きはがすように力を入れる。
ごめんね。
……私は、もうとっくに、佐藤くんが男の子にしか見えなくなってるんだよ。
遠くの方で、ざわつく音が聞こえた。
きっと、私たちの声が聞こえたからだろう。ぱたぱたと足音が聞こえてくる。そして、仕切ったカーテンをめくって、ぞろぞろ人が集まってくる。
「……何やってんだ」
一番最初に口を開いたのは、恭ちゃんだった。
一瞬目を見開いて、それから私たちのところまでやってくる。私を押さえつけていた佐藤くんの手を離すようにぐっと引く。
「……佐藤」
「……ッ」
佐藤くんは、苛立ちが隠せない様子で小さく舌打ちすると、押さえつけていた手を離して明後日方向を睨みつける。



