佐藤くんは甘くない



気まずい雰囲気が流れる。

仕切ったカーテンの向こうで、台本の読み合わせをする賑やかな声がどこか遠くに聞こえる。私はくっと、唇を噛みしめてわざと声を張り上げて笑う。


「いやーもう、あんましびっくりさせないでくださいよー。あ、髪とかセットするので、どうぞ座ってください」

「……あ、……うん」


私がさっき座っていた席に座る様に促すと、佐藤くんは肩を飛び跳ねさせて、慌てて座る。


……よし、どうにか顔の赤みは引いた。

すぐ近くにあった櫛と、化粧や髪のセット用に用意された机から、コテを手に持つ。……コンセントを指してっと。温度を調節して、温まるまで机の上に置く。


私は佐藤くんの後ろに立って、手に持った櫛で髪をとかし始めた。うわ、しっかし佐藤くんの髪の毛さらさらふわふわ。


なんとなく視線を感じて、顔を上げると、目の前にあった少し大きめの置き鏡越しに、佐藤くんの視線が合う。


「……どうしました?」

「別に」


私がそう聞くと、なぜか口を堅く結んで拗ねたようにふいっと顔を逸らす。お前は沢尻エリカか。


不思議に思って、じっと佐藤くんを見ているとまたちらっと鏡を見た佐藤くんと目が合う。……ううん、と。


……あ。