着替え終えた佐藤くんは、私を振り返ると手に持った何かを差し出しながら、言った。
「これ、つけて」
「あ、はい」
一応受け取って、自分の手のひらを見てみると、よくテレビで軍服を着ている人が胸から肩に下げている黄色い紐だった。どこまで完成度高いんだよこの衣装。
「じゃ、つけますね」
「ん」
佐藤くんの右側に立って、安全ピンで肩と胸に止める。……うんうん。よし。頷いて、できたよ佐藤くんと顔を上げたその時───
「……ぁ、」
「……ぁ」
漏れ出したような声が、吐息と一緒に頬に降りかかる。
少しだけ上の視線と、私の視線が交わる。……あれ、こんなに佐藤くんって視線上、だったけ。ぼうっと見上げると、みるみるうちに佐藤くんの顔が赤くなっていくのが見えた。
はっと、我に返る。慌てて後ろに下がる。足がぐにゃぐにゃになったみたいだ。うまく、力が入らない。
「……ご、ごめんなさい」
「……別に」
佐藤くんが手の甲を口元に当てて、私から顔を逸らす。
ぎゅうっと、胸を握りしめる。
突き飛ばしてよ。私のことなんか、触るなって突き飛ばしてよ。
……なんで、馬鹿みたいに、どきどきしてるんだ私は。
佐藤くんの、ばか。



