恭ちゃんが何を言っているのか、理解できなかった。

ただ、分かるのは───目の前にあるその表情は、胸が張り裂けそうになるほど切ない笑みを浮かべていることだけ。


「もう、さ。……分かってたんだ」


「何を、」


「分かるよ、そんなの。ずっと幼なじみだったんだ。ずっと好きだった。ずっとずっと好きだった。……だから、ハルのことなんてハル以上に分かってる」


「どういう、」


心臓が、破裂しそうなほど脈を打っていく。

恭ちゃんが言葉を紡ぐたび、何かがほろほろと崩れていくような気がした。



「きっと、お前は無意識で俺を守ろうとして知らないまま、自分を欺こうとしてる。自分ですら気づかないように心の奥底にしまって、誰にも気づかれないようにしてた」


「恭ちゃ、」





「〝それ〟を知ったら、きっと俺が傷つくって思ったんだ。だから、隠した。無意識のうちに。俺だけじゃなくて、朝比奈も傷つくって分かってたから」



ひまり、ちゃん……?

どうしてここで、ひまりちゃんの名前が出るの?


なんで、恭ちゃんはそんな悲しそうな顔をするの。私がもう守らなくていいって言ったから?ううん、違う。そうじゃない。それが、理由じゃない。


じゃあ、どうして。

どうして───そこまで、考えて一つ、頭の中に思い浮かんだ。ああ、なんで。なんでこんな時に。


恭ちゃんが、そっと私の頬を撫でた。愛おしく、目を細めて壊れ物を扱うように優しく、優しく触れる。その温かさとは裏腹にだんだんと私から体温を奪っていく。