はっと、我に返る。
自分が何を言おうとしていたのか、理解できなくて言葉に詰まった。視線の先で、手の甲が真っ白になるくらい手に力が入っていたことに気付く。
ああ、違う。
たぶん、違う。
情けないんじゃない。情けなくて、心が苦しいんじゃない。
俺よりも、結城のことを知ってる瀬尾が───羨ましいんだ。
だから、嫉妬してる。
俺だって、結城のためになりたい。
あの時、助けてくれたように俺だって結城を助けたい。なのに、その役目は俺じゃない。だって、俺は何一つ結城のことを知らないんだから。
痛いくらいの沈黙が、保健室に流れる。
そして、どれくらいの時間が経っただろう。あまりにも長い沈黙の後、ようやく瀬尾が口を開いた。
「…………少しさ、場所移そうか」



