佐藤くんは甘くない



***


「もう、これでしばらくは大丈夫かな」


はあ、とため息をついて腰に手を当てると、先生はちらりと俺の方を見て困ったように小さく笑った。


「何やってるの、そんな顔しない」


「……」


一体、どんな顔をしていたんだろう。

頬に触れてみるけれど、いつもよりも頬の筋肉がひきつっているのがわかった。鏡では見てないけど、きっと酷い表情をしていたに違いなかった。



「しばらく寝てれば大丈夫だから、君も帰りな。この子の家には私から連絡しとくからさ」


「……いえ」


小さく首を振った。

視線の先に、静かに寝息を立てて眠る結城の姿があった。泣いていたのか、それとも泣き続けていたのか彼女の頬には涙の痕が残っていた。


このまま、帰るにはあまりに俺は知りすぎてしまった。


ぎゅっと、拳を握りめて黙っていると、諦めたのか小さくため息をついて、


「じゃあ、結城さん任せたわね」


そういって、保健の先生はカーテンを閉め切って、行ってしまった。