佐藤くんは甘くない



倒れ込まないように、何とか戸棚を支えにして手のひらに力を入れる。


くっと唇を噛みしめたとき。背後でゴロゴロという突き刺すような轟音、少し遅れて暗かった地下準備室が一瞬明るくなる。





『───残念ですが、』



耳元で、またあの声が聞こえた。

不快なほど降りつづける雨、止まらない耳鳴り、不安をかきたてる雷の音。


頭の中に、忘れたかったあの光景が頭に思い浮かぶ。白い白衣、そして、ただただ私をまっすぐ見つめて、淡々と事実を語る言葉。



『貴方の左肩は、もう二度と、』



嫌だ。

嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、もう何も聞きたくない。


左肩に突き刺すような痛みが走る。それはまるで、私に忘れさせないように戒めているようだった。ぐっと、その左肩を掴んで何度も浅い息を繰り返した。


痛かった。

苦しかった。


こんなの、もう嫌だ。誰か、誰か助けて。





「───ぁ、」


声が、嗚咽とともに漏れる。