佐藤くんは甘くない



「い、たっ……」


思い出すたび、あの光景が頭の奥でかすめるたび、私の左肩に突き刺すような痛みがやってくる。


目から水分が全部蒸発していくみたいに、霞んでうまく見えない。

足がふらついて、がしゃん、と足元に何か当たる。太ももにも何か当たって、踵に何か当たって、そのままふらふらおぼつかない足取りで一歩踏み出す。


「はあ、はあ……っ」


対して歩いたわけでもないのに、心臓が破裂しそうなほど鼓動を速めていく。耳元でどっ、どっ、どっと脈打つ音が耳鳴りとともに響く。


苦しい。

息が上がって、まともに息が吸えない。



遠くの方で、雷が鳴り響く音がした。


それはやけに、鮮明に耳に残る。嫌だ、嫌だ。



もう、何も思い出したくないのに。

もう、何もかも忘れたいのに。




とうとう足に力が入らなくなって、戸棚にもたれ掛る様に私の体はずるずる落ちていく。霞んだ視界がますますぼやけていく。

荒い息とともに、嗚咽が聞こえた。震える手で、自分の頬に触れる。指先が冷たかった。


なに、泣いてんだよ私は。

泣く資格なんてないくせに。