佐藤くんは甘くない



「……きゃ」


帰らなきゃ。

早く、帰らなきゃ。


早く、早く、早く。


心を突き動かすような焦りが、身体の先から熱を奪っていく。これ以上降ってきたら、また私は。











『───ごめんっ、ごめん……!』





耳の奥で、声がした。

次にピーと危険を知らせるみたいに、頭の中でしきりに非常ベルのような音が痛いくらいに鳴り響く。呼吸が乱れる。はあ、と吸うたび喉がひりひりして干からびていくみたいだった。



ああ、だめだ。

思い出しちゃ、だめだ。




『っっ、守るから。もう遅いって分かってるけど、お前は俺のことなんて見たくもないかもしれないけど、話したくもないかもしれないけど、近づいてほしくないかもしれないけど。


 ───どんなことをしてでも、お前のこと守るから』



嫌だ、もう思い出したくない。





もう、これ以上、この痛みを味わいたくない。