佐藤くんは甘くない



大量の資料を両手に抱えてえっさほいさと、一階の職員室から2階の一番端にある地理準備室に着くころには吉原先生への恨みは頂点に上っていた。


「……女子にこんな重たいもん持たせる教師ってどうなのよ」


地理準備室のドアの前で、愚痴がこぼれる。


手渡された鍵を、鍵穴にさして乱暴に開けた。ドアを開けると、普段使われていないせいかしっとりとした空気と埃の匂いが頬に触れる。


中に入ると、振る錆びた戸棚と壊れた地球儀やら何年も使われていないだろう模型が散乱していた。


取り敢えず、開いている戸棚にぼんと持ってきた資料を詰め込む。ふう、一応任務終了。


うんうん、と頷いて───ふと、私は視線を窓の方に移した。








「───あ」




曇ったガラスの向こうで、いつの間にか無数の透明の線が降りかかる。それは次第に増えて、激しさを増していく。……雨だ。



がたんっ、と音がした。

びっくりして振り返ると、ただ私が後ろに下がった拍子に転がっていた標本が足に当たっただけだった。