佐藤くんは甘くない



「さ、と」


声が漏れた。

その声で私ははっと我に返る。気づいたときには、私は立ち上がってそのまま数歩高速で下がった。がががががん、と机が私の手や太ももに当たって整列が乱れる。


私はそんなことも気にせず、ただ茫然といまだに床に倒れ込んだままの佐藤くんを見る。



今、何が。


思い出すたび、蘇ってくるのは頬に当たる温かな吐息と、密着して熱くなった体温。


頭に血が上ったみたいに、熱くて熱くて、私はどうしようもなくってただ佐藤くんを見下ろした。

佐藤くんは、ゆっくりと上半身を起こすと立ち上がることもなく、ただ手の甲で顔を隠して私から顔を逸らす。


「さ、とうく、ご、ごめんなさい」







「……………………てよ」



ぽつっと、声を漏らした。聞き取れない。ごめんもう一度言ってもらえると、言おうとして、その言葉は遮られる。



「…………やめてよ、そういうの」




「え?」




「……せっかくついた嘘、見破られる」