佐藤くんは甘くない









「───っっ、朝比奈!!」





ばん、と乱暴に掴んで引き寄せる。


しばらく、掴んだ感触も、胸にあたるそわそわする甘い香りも、現実味がしなくて、まやかしだと思ってぎゅっと固く目を閉じたまま、だった。


でも、それがぎゅっと俺のシャツを掴みかえしていることに気付いて、うっすら目を開く。


自分の腕にも収まるくらい、小さな体がひとつ、すぐ至近距離にあった。……良かった。硬直していた体からすうっと力が抜けていく。


「……大丈夫?」


小さく、声を掛けるとびくっと肩を震わせた朝比奈さんが───ゆっくりと顔を上げる。なぜか、顔が赤い。目もうるんでいて、頼りなさそうに俺を見上げていた。


「い、ま」


今?


たどたどしく、朝比奈さんが言葉を紡ぐ。恥ずかしそうに、目を伏せると小さな声で言った。




「さとうく、あさひなって……」








え?