朝比奈さんは、すっと座っていたベンチから立ち上がると、
「だからね、少しでもこはるちゃんに近付けるように努力しようって思うんだ」
そういいながら、月を見上げる。
「……そっか」
「うん。だから、もし困ったことがあったら私にも相談してね」
「は?」
ぴんと、頭上の月に手を伸ばすみたいに背伸びをした朝比奈さんが、俺の方を向いてきょとんとした顔でもう一度言う。
「私じゃ役不足かもしれないけど。佐藤くん、人間関係で悩んでるんだよね?」
「はあ」
実に生返事をしてしまった。
そんな俺に対して、朝比奈さんは相も変わらない、俺では両手で抱えきれないほどの満点の笑みを浮かべると、はっきりと断言した。
「うん、だから。困ったら私にも相談してね!友達として、協力するよ!!
私あんまり頼りないから、こはるちゃんみたいにはうまくいかないかもしれないけど、佐藤くんのために頑張る!友達だから!」
「……」
もうすでに心が折れそうだった。
「あー……まあ、うん、その時はよろしく」
「うん!!」
はきはきとした返事が、心にざっくり刺さる。それから満点の笑みも。この状況でこのセリフが言えた自分をどうか誰かに褒めてほしいくらい。
キミ、悩みの元凶で、当事者だから。
……なんて言えるわけがない。



