佐藤くんは甘くない



秘密。

そのたった二文字が、ガツンと俺の頭の中に入ってくる。


朝比奈さんを好きになった当初なら───きっと、こんなことが起こりうるだなんて想像できなかった。


「手、貸して」

「て?」


朝比奈さんがぼうっと、俺を見上げてなんの危機感もなく手を差し出してくる。


……そういうの、よくないよ。

なんて。


どして?って聞かれたら理由、言えるわけないけど。


どうしよう。すごく、あほみたいに、緊張する。心臓が今にも飛び出そうだ。

ぐっと暴れそうな気持ちを抑えて、平常心で朝比奈さんの手を取る。ひんやりと冷たくて、野郎の手とは根本的に違う柔らかさ。

彼女の白い華奢な手の平に、少しだけ赤くぷつぷつと浮き出ているところがあった。


俺は、コンビニで買ってきた消毒液を、コットンに湿らせてそっと上に乗せて、なるべく優しくたたく。


「いーうー」


朝比奈さんが見るのも怖いのか、顔を盛大にそらしながら足をじたばたさせる。