佐藤くんは甘くない




「ま、分からないでもないですかねぇ」

「はあ?」


佐藤くんがわけが分からない、みたいな顔で素っ頓狂な声を上げる。


「佐藤くんみたいな人がいたら、私だって声掛けたくなっちゃいますもん」

「おっさんかよ」

「それくらい佐藤くん、きれいだなって思うんスよ」

「意味不明」


佐藤くんは小さくため息をつくと、言葉を続ける。





「女のアンタの方が何倍も、綺麗だと思うけど」




ぽろりと、心からぽろりとこぼしてしまうみたいにそう、言った。


「……」



いろんな言葉が頭の中から吹き飛んだ。

私は、思わずぴたりと足を止めて固まってしまう。そんな私を訝しげに振り返って何やってんの?と佐藤くんが言った。その声すら、はるか遠くに聞こえる。

そして───不思議に思ったのか、佐藤くんがしばらく考えるように宙に視線を向けて、それからばっと口元を押さえると、あ、と声を漏らした。