「ひまりちゃんたち、もう玄関前で待ってるみたいだから早く行ってあげな」
お母さんが、そういって机に置いてあった私の巾着を手渡してくれた。
それを受け取って、行ってきまーすと言いながら階段を駆け下りる。履き慣れない下駄に悪戦苦闘しつつ、玄関を開けるとすでに、ひまりちゃんと瀬尾がいた。
「おっせーよ、ったく」
呆れた顔をして、ため息をつく瀬尾。シンプルなTシャツに細身のパンツで合わせていて、いつもよりはまあ遠目で見たらかっこよく見えるかもしれない。
その隣で、くすくす笑いながら、
「ごめんね、私までこはるちゃんのお母さんに着付けしてもらって」
ひまりちゃんがそういう。
ひまりちゃんは白地に紫や薄水色の朝顔が彩られた、涼しげな浴衣を身に纏っていて、丁寧に巻いた栗色の髪が笑うたびふわふわ揺れて可愛い、写メ撮りたいくらい。いや、撮ったけど。
「いやいやいいんだよー、うちのお母さん張り切ってたし」
「しゅばばーってすごかったよねぇ、こうなんかじゅばばーぼうーみたいな!」
うん、何言ってるかよくわからないけど可愛いから許す。
「んじゃ、集合時間まであとちょいだし行くか」
腕時計をちらりと見た後、瀬尾がそういう。
からん、履きなれない下駄から小さく音が鳴った。