佐藤くんは甘くない



「……じゃあ、ここで」

「ああ、また明日なー」

「佐藤くんばいばーい!」


私たちが小さく手を振るけれど、恥ずかしいのか、曖昧な表情を浮かべる。

やがて、青信号が点滅し始めて、佐藤くんはあわてて信号を渡り始める───ふと、足が止まった。

なんだろ?と不思議に思って、佐藤くんの方を向く。

さっきまで、素面を切っていた佐藤くんの表情に、一瞬ためらいが浮かんでいた。


けれど、佐藤くんは顔を真っ赤にしてぎゅっと固く握った拳を、控えめに胸の前へ持っていく。そして、ぎこちなく手のひらを広げると、



「……ばいばい、結城」



ふわり、と。

優しげな笑みを浮かべて、そういった。






「───」


ああ、本当に。


佐藤くんは、いつだって不意打ちばかりつくから。



ぱたぱたと忙しく走り去っていく佐藤くんの背中を見つめながら、私の頭の中にふっと〝あの時の言葉〟が鳴り響く。







『───本当は、好きだよ』