佐藤くんは甘くない


***

そして、その帰り。

私たちは肩を並べながら、いつものように夕暮れの日を浴びて歩いていた。


「にしても、本当に良かったです」


私がそう口を開く。

右隣を歩いていた佐藤くんが小さくため息をついて、ずり落ちた鞄をもう一度肩に掛けなおすと、

「もしあの時朝比奈さんが、ああやって返してくれなかったら、きっと俺末代までお前ら呪ってた」

吸い込まれそうなほど真っ黒な瞳で、私に笑いかける。


「……」


……ほんっとーに、本当に、本当によかった。

喜べ、私の孫の孫の孫、その先の孫たち。お前たちの命、私が守ったよ。


もしかして、あの時ひまりちゃんがもうラインしないでくださいとか返信していたらと考えるだけでぞっとしたので、止めておくことにした。


「よし、これで夏休みの予定も確保したし。佐藤の恋路も一歩前進だな」

瀬尾が、ひょこっと顔を出して人懐っこい笑みを浮かべる。


「うんうん。私にはもう、佐藤くんとひまりちゃんがバージンロードを歩いているところが見えるっス」

「…………気が早すぎ」

「結婚式は沖縄でお願いしますね」


佐藤くんが気恥ずかしそうに、ふいっとそっぽを向きながらつぶやく。でも、様子を見るに満更でもなさそうだ。このこのっ!!


なんやかんや話しているうちに、いつも別れる信号まで来てしまった。