佐藤くんは甘くない



真っ先に声を上げたのは、佐藤くんだった。


びっくりして、佐藤くんに視線を向けるとなんでだよ!!とでも言うような視線で左右の手を、グネグネ動かしていた。

そして、小さく息を吸って吐いて、ようやく佐藤くんが言った。


「……なんでそんなに、形式なんだよ」


「え、いや。だって礼儀正しさをアピールするにはやっぱり、やっほーとかいま暇?より拝啓のが正しいと思ったんスけど」


「なんでラインでいちいち、社外文書みたいな真似するあんの?」


「佐藤、考えてみろって。相手はあの朝比奈だぞ?他の奴とはわけが違うんだよ。常人では通じないような挨拶が通じるんだよ」


「その言葉撤回しないと今すぐ殴るよ」


「いやぁアア!もうすでに殴りかかりそうなんですけどっ!!」


瀬尾と佐藤くんが取っ組み合いをしているうちに、私は最初の一行目に拝啓と書き綴る。

「ほら、瀬尾も」

「え?あ、待って、ちょっと佐藤くん!!やめよ、そこまで腕上げるの止めよ、死ぬから。死ぬから!!」

「凹凸のない平面な顔にしてあげる」

「ぶぎゃっ」



ふむ。

ぶぎゃ……っと。

拝啓の後に付け加える。なるほど、さっき瀬尾が言っていた気軽に話せる人イメージを植え付けるために奇声を発してるんだなこれは。