佐藤くんは甘くない





「……これを、あなたに渡します。

 ずっと渡せなかった。けれど、ようやく渡せる日がやってきました。


 それはね、柚月が玄関先で倒れていた時───あの子の手に握られていたものです」



柚月が───持っていた?


あの時、あの場所で、俺を追いかけるようにして倒れていた柚月。



確かに、便箋の中にはもう一枚紙が、入っていた。手に持つと、お母さんの手紙よりも厚く、固い。


その感触を、俺は知っていた。



そう。


それは、画用紙に似た、感触。


そっと、取り出す。四つに折りたたまれた画用紙は、皺が寄っていたり、茶色のしみが端に浮かんでいたり、もう随分前のものだと知らせてくれる。



ゆっくりと、その画用紙を開いて───、目を見張る。手が、震えて、息もできなくなっていく。嗚咽だけが、部屋に響き渡っていた。


そこには、クレヨンで描かれた4人の家族が、幸せそうに笑っていた。


真ん中に、小さな俺。そして、笑顔で手をつなぐ、柚月。それを挟むようにして笑いあう、お父さんとお母さん。


慣れない、何度も書き直したメッセージ。

それを、指でなぞって、


「……ゆ、ずき」


そのプレゼントを───抱きしめた。

そこには、こう書かれてあった。