そして二つ目は、誕生日の日、あなたを迎えに行く約束を果たせなかったこと。
あの家を出た後、私は母───あなたのおばあちゃんのところへと真っ先に行きました。一年がたち、二年がたち、三年がたち、私はそれでも気持ちの整理がつかないままでした。
一体、あなたをどう迎えてあげるべきなのか、私にお母さんと呼ばれる資格があるのかと、うじうじ悩み続け、結局答えは出ないまま。
けれどある時、私に腫瘍ができていることが、分かりました。一度目の手術で摘出したものの、それは転移して私の体を蝕んでいきました。
やがて、自分の足では立つことすらままならなくなったとき、後悔しました。
どうして、あなたに逢いに行かなかったんだろうと。
もう、二度とあなたの笑みを、あなたの声を、あなたの体温を、あなたの頬を、触れることも、聞くことも、見ることもできなくなってしまった。
そんな時、出逢ったのが───あなたの今のお母さん、佐藤薫さんでした。
彼女は克彦さんと結婚した後、あなたとの関係に悩み、そしてその根底に私がいることを知ったのです。
彼女は、私に逢いに来ました。
そして、どうしたらいいのかと聞いてきました。
その言葉を聞いて、私はどうしようもなく、安心してしまったのです。
那月には、これほど強く思ってくれる人がいるんだって。



