佐藤くんは甘くない



「……でも、貴方は」


結城が、何かを言いかける。

けれど、口をつぐんでしまった。でもそれは自分で納得のいく答えがないから、言えないと言っているように見える。



「……まあ、僕は貴方の話したほんの一部分しか知らないんです。手紙のことも、その佐藤薫さんって方が関与していたことも、知りませんでした」


困ったように、首をかしげながらその人は言う。


「ただ、僕が知っていたことは───早苗さんの息子さんが、ちょうど20歳になる頃、この家に訪れるだろう、ということだけ」



新谷さんと視線が、合った。


その瞳には、温かな優しさも、包み込むような安心感もなくて、ただただ鏡のように俺を、写していた。


そんな彼を責めるように結城が目を細めて、強い口調で言う。


「じゃあ、どうして何も知らないなんて言ったんですか」


「どうして、って言われると……なんでなんだろう」


握ったてのひらの力が、強まる。ひしひしと怒りが伝わってきた。結城の思っていることは、すぐにわかった。その嘘が、どれだけ佐藤くんを傷つけたと思ってる、だろうきっと。



彼は、曖昧に笑みを浮かべて、小さくため息をついた後、


「しいて言うなら、悔しかったから、かな」