佐藤くんは甘くない



「例えば、一番最初に受け取ったこの手紙。

 ここにはこう書いてあります。


 あれから随分と立って、もっと身長が伸びているのかな

 たぶん、貴方は忘れたいと思うでしょう、私のことを 

 在り来たりな言葉だけしか言えないけれど、ごめんなさい

 静かに泣くあなたに何もしてあげられなくて

 今、何をしてるんだろう。たとえ目に見えなくても、聞こえなくても。貴方が、幸せであることを願ってる


 ……おかしいと思いませんか?」



「……何がかな」


「文の終わりの句読点もない、それに〝たぶん、貴方は忘れたいと思っているでしょう、私のことを〟

 
 この文、普通なら〝たぶん、私のことを貴方は忘れたいと思っているでしょう〟と書くはずじゃないですか。

 ほかにも、なぜかわざわざ倒置法で書いているところが多々あります。

 
 ……簡単な、謎かけですよ。

 
 最初の文字はあ。そして、その分の最後がな。

 次がた、最後がを。

 これを全部繋げて行ったら、何になると思いますか」



最初が、あ。次が、な。その次が、た、を、あ、い、し、て、い、る。


全部を繋げたら。

じわりと、視界が滲んだ。こらえきれなくなったものが、全部吐き出されてしまうみたいに、心にできた壁が壊されていく。それが、お母さんの伝えたかった本当の言葉だったのなら。





あ、な、た、を、あ、し、て、い、る






『貴方を愛している』