「待ち続けるということは、佐藤くんが前に進めないということです。
おそらく、真実を知るまで───佐藤くんが立ち直るまで、ずっと。
薫さんと佐藤くんはお互いに何も分かりあえない。仲たがいしたまま、ずっと過ごすことになる。
だから、もう、それが耐えられなかったから。
だから、薫さんは……わざと、私にあの手紙を手渡しで、渡したんです。こうなることを、望んで。私たちが今いる、この状況を。それが今ある状況です」
「……君の疑問については、分かったよ」
それまで口を閉ざしたままだった、新谷さんが重い口調で言った。
「けれど、それでどうして早苗さんが彼を気にする理由になる?
最期の最期まで、想っていた理由になる?」
確かに、そうだった。
いくらお母さんが、俺に対して何か思うところがあろうとも───それは、温かい真実じゃないかもしれない。冷たい、事実かもしれないのだから。
「……確かに、私もそう思います。いくら、佐藤くんのお母さんが佐藤くんに手紙を届けるために策を練っていたとしても。
……それが、最期まで佐藤くんを想っていた理由するには、まだ足りないって。
だから、この手紙なんです」
そういって、結城は手紙を一枚一枚便箋から取り出した。
ポケットの中から、真っ白の小さなメモ用紙と備え付けのシャーペンを握りしめると、さらさらと書き綴っていく。



